「読みたい本がない」を解決する——多読を左右する本選びの戦略
多読の継続を決めるのは、意志の強さでも英語力でもなく、次に読みたい本があるかどうか——そう言っても大げさではありません。実際、研究でも「何を読むか」をめぐる要因が、多読への取り組みを大きく左右することが示されています。今回は、「読みたい本が見つからない」を解決する具体的な戦略を紹介します。
研究が示す「内発的動機」の力
日本の高校生を対象に多読への動機づけを調べたTakase(2007)の研究では、英語で読むことへの内発的な動機づけ——「読みたいから読む」という気持ち——が、多読への取り組みを左右する主要な要因の一つだったと報告されています。
また、多読研究者Day氏とBamford氏の「多読指導の10原則」(2002)でも、「学習者が読むものを自分で選ぶ」「読書の目的は楽しみや情報を得ること」が原則として明記されています。本選びは多読のおまけ作業ではなく、多読という学習法の中核なのです。
戦略1:日本語の読書趣味から逆算する
「英語で何を読むか」に迷ったら、まず「日本語なら何を読むか」を思い出してください。ミステリーが好きな人は英語でもミステリーを楽しめる可能性が高く、ノンフィクション派が英語だけ小説を読む必要はありません。
- •推理・サスペンス好き → Graded Readersのミステリーシリーズ
- •映画・ドラマ好き → 映画原作やノベライズのリライト版
- •実用書派 → 伝記や科学読み物のGraded Readers
Extensive Reading FoundationのGraded Reader Listでは、レベルだけでなくジャンルからも本を検索できます。
戦略2:「シリーズ」と「作家」を確保する
1冊おもしろい本に出会ったら、それは1冊分の当たりではありません。同じシリーズ・同じ作家・同じジャンルという「鉱脈」を見つけたということです。続刊があるシリーズものは、「次に読む本」を探すコストをゼロにしてくれます。
逆に言えば、多読が止まりやすいのは「1冊読み終えて、次が決まっていないとき」です。今の本を読み終える前に、次の1冊を手元に用意しておく——これだけで、読書の空白期間は大幅に減ります。
戦略3:やめる基準を決めておく
「せっかく買ったから」「途中でやめるのは負けた気がするから」と、合わない本にしがみつくのは、多読では悪手です。Day & Bamfordの原則でも、読書は楽しみのためのものであり、読み進められない本を我慢して読む活動ではありません。
おすすめは、「20ページルール」のような機械的な基準です。20ページ(薄い本なら2章)読んで続きが気にならなければ、その本は今の自分に合わなかっただけ。堂々と次へ行きましょう。合わない本を早く手放すほど、合う本に出会う回数は増えます。
「読書家の悩み」は良い悩み
「次は何を読もうか」という悩みは、実は読書家だけが持てる贅沢な悩みです。多読を続けるうちに、読みたい本のリストは自然と読むペースを追い越していきます。積読の山がやさしい英語の本でできている——それは、学習がうまくいっている何よりの証拠です。
今日、「次の1冊」の目星をつけておきませんか。
参考文献
- •Takase, A. (2007). Japanese high school students' motivation for extensive L2 reading. Reading in a Foreign Language, 19(1). http://www2.hawaii.edu/~readfl/rfl/April2007/takase/takase.html
- •Day, R., & Bamford, J. (2002). Top ten principles for teaching extensive reading. Reading in a Foreign Language, 14(2). https://nflrc.hawaii.edu/rfl/item/61
- •Extensive Reading Foundation. Graded Reader List. https://erfoundation.org/wordpress/graded-readers/graded-reader-list/