「TOEIC何点」以外の目標の立て方——CEFRの「Can-do」という道具
英語学習の目標を聞かれて、「TOEIC○○点」以外の答えを持っていますか。
点数目標は便利です。測れるし、締切も作れる。でも、点数だけを追っていると、ときどき方向を見失います。「で、この点数が取れたら、私は何ができるようになっているんだっけ?」——そんなときに役立つのが、CEFRの「Can-doステートメント」という道具です。
「できること」で書かれたレベル表
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)は、言語能力をA1〜C2の6段階で表す国際的な枠組みです。その最大の特徴は、各レベルが「〜できる(Can-do)」という行動の記述で定義されていることです。
たとえばB1なら「仕事や身近な話題で、筋の通った簡単な文章が作れる」「旅行中に起こりそうな大抵の状況に対処できる」、B2なら「自分の専門分野の議論についていける」「幅広い話題で明確な文章を書ける」といった具合です(記述は概略)。
TOEICのスコアとCEFRの対応については、IIBCが公式の対照表を公開しています(IIBC)。つまり、点数目標とCan-do目標は、対照表を介して行き来できるのです。
Can-do目標が学習を変える3つの理由
1. 学習内容が自動的に決まる
「750点を取る」からは、何を練習すべきかは直接出てきません。でも「電話で日程変更の交渉ができるようになる」なら、練習すべき場面・語彙・表現が具体的に見えます。目標が行動で書かれていると、練習も行動になります。
2. 達成が「点数の外」でも確認できる
Can-do目標は、日常の中で達成チェックができます。英語のメールを辞書なしで返せた日、ドラマの一場面が字幕なしでわかった日——スコアの発表を待たずに、成長を確認できる機会が増えます。こうした「できるようになっている実感」は、動機づけ研究で重視される有能感の感覚を支えてくれます(Ryan & Deci, 2000)。
3. 点数の「その先」への接続が生まれる
スコア目標は達成した瞬間に空白を生みますが、Can-doのリストは次々と続いています。「読める」の次は「議論できる」。目標の階段が、試験の外の人生につながっているのです。
実践:二本立ての目標設定
おすすめは、点数とCan-doの二本立てです。
1. 点数目標: 「半年後にTOEIC700点」——測定と締切の役割
2. Can-do目標: 「仕事のメールを自力で読んで返せる」「海外ニュースの見出しと要点がわかる」——方向と実感の役割
月に一度、Can-doリストを見返して「できるようになったこと」に印をつける時間を作ってみてください。点数がまだ動いていない月でも、印は増えているはずです。その印が、次の月の燃料になります。
目標は「点」ではなく「矢印」
点数はあなたの現在地を測ってくれますが、進む方向までは教えてくれません。Can-doは、その矢印です。
「TOEIC何点」の隣に、もう一行。「英語で○○ができるようになる」。その一行を書き足すだけで、明日の学習の景色が少し変わります。
参考文献
- •IIBC「TOEIC Program各テストスコアとCEFRとの対照表」 https://www.iibc-global.org/toeic/official_data/toeic_cefr.html
- •Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.1.68