OMNITELLER記事一覧
記事一覧に戻る更新日: 2026/7/25
コラム

読む速さは、働く速さになる——リーディング力という「見えない業務スキル」

一日の仕事のうち、「読む」に使っている時間を数えたことはありますか。メール、資料、報告書、チャット、仕様書——ホワイトカラーの仕事は、その多くが読む作業でできています。

だとすれば、こう言えるはずです。読む速さが2倍になれば、仕事のかなりの部分が2倍速くなる。 そして英語の業務が増えるほど、この「読む速さ」の差は拡大していきます。


英語の「読む速さ」は放っておくと上がらない

日本語なら、私たちは自然に速く読めます。膨大な量を読んできたからです。しかし英語では、多くの人が「一語ずつ訳しながら読む」段階で止まっています。この読み方は正確さはあっても、業務のスピードには追いつきません。

読む速さは、意識的に育てる必要のあるスキルです。そして育て方は研究で示されています。日本人大学生を対象にした研究では、快適に読めるレベルの英文を大量に読むことで、読解速度が向上したと報告されています(Beglar, Hunt & Kite, 2012)。ポイントは「難しいものを頑張って読む」のではなく、「易しいものを大量に読む」こと。速さは、余裕のあるレベルでしか育たないのです。

また、多読が読解力そのものを向上させることも、49研究を統合したメタ分析で報告されています(Jeon & Day, 2016)。速く読めることと正確に読めることは、多読の中で同時に育っていきます。


TOEICのリーディングは「業務処理速度の模擬試験」

TOEICのリーディングセクションは75分で100問。文書量に対して時間が厳しく設計されており、「正確に、かつ速く」読む力がそのままスコアに出ます。

見方を変えれば、これは英語の業務処理速度の模擬試験です。リーディングスコアが上がっていくことは、実務での「読む仕事」が速くなっていることの、かなり素直な指標になります。

  • 英文メールの処理が数分で終わる
  • 会議資料を会議前に読み切れる
  • 長い報告書から必要な箇所を素早く見つけられる

こうした変化は、リーディングスコアの伸びとおおむね並行して起きていきます。


「速読の練習」より「快適な多読」

読む速さを育てる実践は、シンプルです。

1. レベルを下げる勇気: 辞書なしでスラスラ読める素材を選びます。研究では、快適な読解には語彙カバー率約98%が目安と報告されています(Hu & Nation, 2000)。

2. 量を確保する: 毎日15〜30分、読む時間を固定します。速さは量の関数です。

3. 返り読みをしない: 頭から順に理解して進む癖をつけます。多読は、この「直読直解」の練習でもあります。


積み上がるのは、時間そのもの

読む速さへの投資のリターンは、明快です。節約された時間が、毎日、複利で返ってくるからです。1日30分の読み物時間が20分になれば、年間で数十時間。その時間で、あなたはさらに読み、さらに速くなれます。

読む速さは、履歴書には書けない業務スキルです。でも、一緒に働く人は必ず気づきます。「あの人、仕事が速い」——その正体の一部は、今日の多読15分かもしれません。


参考文献

投稿日: 2026/7/9更新日: 2026/7/25