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記事一覧に戻る更新日: 2026/7/25
コラム

「何冊読んだか」より「何語読んだか」——累積語数という物差しのすすめ

多読の進み具合を「冊数」で数えていませんか。実は多読の世界では、読んだ総語数(累積語数)で進捗を測るのが定番です。薄い絵本も分厚いペーパーバックも「1冊」と数えてしまうと、努力量が正しく見えないからです。

今回は、この「語数」という物差しがなぜ優れているのか、そしてどれくらいの語数を目指せばよいのかを整理します。


なぜ語数で数えるのか

語数で数える最大の利点は、どんなレベルの本を読んでも努力が同じ単位で積み上がることです。600語のやさしい読み物も、6万語の小説も、同じ「語数」として加算されます。レベルを上げる必要も、背伸びする必要もありません。今日読めるものを読めば、数字は必ず増えます。

そしてこの数字は、研究の知見とも相性が良いのです。日本の大学生を対象にしたBeglar, Hunt & Kite(2012)の研究では、1年間の「楽しみのための読書」で読んだ量が多いグループほど読解速度の伸びも大きかったと報告されています。つまり、多読の効果を左右する中心的な変数は「量」。その量を最も素直に表すのが累積語数です。


語彙の視点から見た「量」の意味

「どれくらい読めばいいのか」を考えるうえで参考になるのが、語彙研究の知見です。Nation(2006)は、文章の98%の単語を知っている状態で英文を補助なしで読むには、8,000〜9,000ワードファミリーの語彙が必要になると推定しています。

この数字だけ見ると気が遠くなるかもしれません。しかし裏を返せば、語彙は一夜漬けでは絶対に届かない領域であり、毎日の読書で単語との遭遇回数を積み上げていくことが、遠回りに見えて確実な道だということです。Webb(2007)が示したように、単語の知識は繰り返しの遭遇によって少しずつ深まります。累積語数が増えるほど、その「遭遇の総回数」も増えていきます。


マイルストーンを設計する

多読指導の国際団体であるExtensive Reading Foundation のガイドでも、継続的にまとまった量を読むことが推奨されています。目安として、次のような節目を設定してみましょう。

  • 1万語:やさしい読み物なら数冊。まず「英語の本を読み切れる」ことを確認する段階
  • 10万語:読むリズムが身につき、返り読みが減ってくる頃
  • 30万語:好きなジャンル・シリーズができて、多読が「学習」から「趣味」に近づく頃
  • 100万語:多読実践者の間で古くから目標とされてきた、ひとつの到達点

大事なのは、節目ごとに小さく祝うことです。10万語に到達した日の日付をメモする、読了リストを見返す——それだけで、数字は単なる記録から「自分の歩いてきた道のり」に変わります。


今日の1,000語が積み上がる

1分あたり100語のペースで10分読めば、約1,000語。毎日続ければ1か月で3万語、1年で36万語を超えます。特別な才能も、まとまった時間も必要ありません。必要なのは、今日の10分だけです。

「冊数」ではなく「語数」で数え始めた瞬間から、どんなやさしい1ページも、100万語への確かな一歩になります。


参考文献

投稿日: 2026/7/4更新日: 2026/7/25