「手を挙げられる人」になる——社内公募とグローバル案件の静かな条件
社内公募の告知を見て、「面白そうだな」と思いながらスクロールで通り過ぎたことはありませんか。
新規事業、海外拠点との協業プロジェクト、グローバル製品の担当——魅力的な案件の募集要項には、しばしば小さくこう書かれています。「英語力:TOEIC○○点程度」。この一行の前で、手を挙げる人と挙げられない人が分かれます。
「挙手の権利」は事前に配られている
社内公募やプロジェクトアサインの英語要件は、意地悪で設定されているわけではありません。海外メンバーとの会議、英文資料の読み書きが日常業務に含まれる以上、担当者に一定の英語力が必要なのは合理的な条件です。
問題は、このチャンスが不定期に、突然、締切つきでやってくることです。公募の締切は数週間後。そこから英語を勉強しても、間に合いません。つまり、「手を挙げる権利」は、募集が出るより前の日々の中で、静かに配られているのです。
IIBCの資料では、昇進・昇格において英語力を要件・参考(今後の可能性を含む)とする企業が各役職で4割前後と紹介されています。公募やアサインの場面でも、英語力が人選の材料になっていると考えるのが自然です。
スコアは「やる気の証明書」としても働く
社内公募の選考で見られるのは、現時点のスキルだけではありません。「この人は本気でこの案件をやりたいのか」という意欲も見られています。
ここでTOEICスコアは二重に働きます。要件を満たす能力の証明であると同時に、この日のために準備してきたという意欲の証明にもなるのです。「いつか海外案件をやりたいので、英語は継続的に勉強してきました。直近のスコアは○○点です」——この一言が言える応募書類は、強い。
実際、企業がビジネスパーソンに重要と考えるスキルとして英語が74.5%で挙げられたと紹介されており、英語への投資は組織の期待と方向が一致した努力だと言えます。
「いつ出るかわからない募集」への備え方
チャンスの時期が読めない以上、備えは「低負荷で長く続く」形にするのが合理的です。
- •毎日のインプットを既定路線にする: 通勤中の多聴、寝る前の多読15分。多読が読解力を向上させることはメタ分析で報告されており(Nakanishi, 2015)、負荷の低い継続は確実に土台を作ります。
- •年に1〜2回、定点観測として受験する: スコアを常に「提出できる状態」に保っておくと、突然の募集にも即応できます。
- •社内の過去の公募要件を調べておく: 自社でどの程度のスコアが求められてきたかを知れば、目標設定が具体的になります。
要件欄の「読み方」も知っておく
なお、公募の英語要件には読み方のコツがあります。「TOEIC○○点以上」と明記されていれば足切りの可能性が高い一方、「○○点程度」「英語力があれば尚可」といった表現なら、多少届いていなくても意欲と実績で勝負できる余地があります。
また、要件に届いていない場合でも、「現在○○点、半年で○○点まで上げてきた」という伸びの実績は、静的な点数とは別の説得力を持ちます。スコアの推移を記録しておくことは、この意味でも応募書類の武器になります。
通り過ぎない人生へ
社内公募は、転職のリスクを取らずにキャリアの舵を切れる、貴重な仕組みです。その入り口で毎回スクロールして通り過ぎるのは、あまりにもったいない。
次の募集が出たとき、「面白そうだな」で終わらせず、要件欄を見て「いける」と思える自分でいること。その準備は、今日の15分から始まります。
参考文献
- •IIBC「企業・団体の主なTOEIC Program活用目的」(英語活用実態調査2022ほか) https://group.iibc-global.org/organizations/corporate/study
- •Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. https://doi.org/10.1002/tesq.157