「昇進の条件にTOEIC」は本当にあるのか——4割の企業が英語力を見ている
「課長になるにはTOEIC○○点が必要」——そんな話を聞いたことはありませんか。都市伝説のようにも聞こえますが、実はこれ、多くの企業で現実に存在する制度です。
TOEICを運営するIIBCが公開している「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」に基づく資料では、昇進・昇格において英語力を「要件としている」「参考としている」、あるいは「今後要件・参考とする可能性がある」とした企業が、各役職でおよそ4割前後にのぼると紹介されています。
つまり、いま英語と無縁の部署にいても、キャリアの階段のどこかで「スコアの提出」を求められる可能性は、決して低くないのです。
実際の企業はどんな基準を置いているのか
IIBCの活用事例では、具体的な基準スコアを設けている企業が紹介されています。たとえば、係長格への昇格に400点以上、課長格に500点以上を求める企業や、総合商社のように730点とTOEIC Speaking Test 130点を昇格要件に組み込んでいる企業の例が公開されています。
注目したいのは、この数字の「幅」です。最初の関門は400点や500点——つまり、英語が得意な人だけのハードルではなく、「社会人として最低限の英語の素地があるか」を確認するラインとして設定されているケースが多いのです。
一方で、上位の役職やグローバル案件を扱うポジションでは730点前後が目安になることもあります。役職が上がるほど、海外拠点とのやり取りや契約書の確認など、英語で「責任を持つ」場面が増えるためと考えられます。
「昇進が決まってから」では間に合わない
ここで一つ、冷静に考えたいことがあります。語彙習得の研究では、実務に必要な語彙は数千語規模にのぼり、その習得には長期間の積み重ねが必要だと報告されています(Nation, 2006)。
昇格の内示が出てから慌てて参考書を開いても、数週間でスコアを大きく動かすのは簡単ではありません。逆に言えば、昇進の話が出る前から少しずつ積み上げている人は、その瞬間に「準備ができている人」として扱われるということです。
キャリアの節目は、往々にして突然やってきます。スコアという貯金は、その突然に備える保険のようなものです。
今日からできる小さな備え
- •自社の人事制度を確認する: 昇進・昇格要件に英語基準があるか、就業規則や人事ポータルで一度調べてみましょう。「知らなかった」が一番もったいないパターンです。
- •現在地を測る: まず一度受験して、いまの自分のスコアを知る。目標との距離がわかれば、計画が立てられます。
- •毎日のインプットを習慣にする: 多読・多聴のような継続型の学習は、読解力の向上に効果があることがメタ分析でも報告されています(Jeon & Day, 2016)。試験前の詰め込みより、日々の積み重ねが結局は近道です。
階段は、先に登り始めた人のもの
昇進とTOEICの関係は、脅しの材料ではありません。むしろ「基準が明文化されている」ことは、努力の方向がはっきりしているという意味で、働く側にとってフェアな仕組みだとも言えます。
4割の企業が英語力を見ている——この事実を、プレッシャーではなく「先回りのチャンス」として使ってみませんか。今日の30分が、数年後のあなたの選択肢を広げてくれるはずです。
参考文献
- •IIBC「企業・団体の主なTOEIC Program活用目的」(英語活用実態調査2022ほか) https://group.iibc-global.org/organizations/corporate/study
- •Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
- •Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265. https://eric.ed.gov/?id=EJ1117026