駐在という選択肢は突然やってくる——海外赴任と605〜805点というレンジ
もし明日、上司から「海外赴任、興味ある?」と聞かれたら、あなたは何と答えますか。
「いつか海外で働いてみたい」と思っている人は少なくありません。しかし駐在の打診は、キャリアの中で何度も来るものではなく、しかも多くの場合、突然やってきます。そのとき「はい」と即答できるかどうかを分ける要素の一つが、英語力の客観的な証明です。
企業は赴任者を「データ」で選んでいる
TOEICを運営するIIBCの資料では、「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」に基づき、海外赴任者の選抜において5〜6割の企業がTOEICスコアを活用(要件・参考、またはその可能性を含む)していると紹介されています。
また同資料では、海外部門の社員に期待されるスコアとしてTOEIC L&Rで605〜805点というレンジが示されており、TOEIC Speaking & Writing Testsでは平均でSpeaking 140点、Writing 150点が目安として挙げられています。
幅があるのは、赴任先や業務内容によって求められるレベルが違うからです。製造拠点の管理と、現地法人での営業開拓では、必要な英語力が異なるのは自然なことでしょう。重要なのは、多くの企業が「候補者選び」の段階でスコアを見ているという事実です。
駐在が変えるのは、キャリアだけではない
海外駐在の経験は、履歴書の一行以上の意味を持ちます。
- •裁量の大きさ: 本社より少人数の拠点では、若手でも幅広い業務を任されることが多くなります。
- •視野の変化: 日本のやり方が「唯一の正解」ではないことを、日常業務のレベルで体感できます。
- •人的ネットワーク: 現地の同僚・取引先とのつながりは、帰任後も生きる資産になります。
もちろん、生活の立ち上げや言葉の壁など、大変なことも多いのが駐在です。だからこそ企業は、「現地で潰れずにやっていける素地があるか」を見極めようとし、その材料の一つとしてスコアが使われるのです。
「いつか」を「いつでも」に変える準備
赴任の打診に即答するために、今日からできることはシンプルです。
1. まず現在地を知る: 一度受験して、605〜805というレンジと自分の距離を測ってみましょう。
2. 長期戦の仕組みを作る: 語彙の研究では、実務レベルの読解には8,000〜9,000語族規模の語彙が必要になり得ると報告されています(Nation, 2006)。これは数か月の詰め込みではなく、日々のインプットで育てる数字です。
3. 読む・聞くを生活に組み込む: 多読が読解力を向上させることは複数のメタ分析で報告されています(Jeon & Day, 2016)。通勤時間の15分を英語に変えるだけでも、1年で大きな差になります。
打診されてから考えるのでは、遅い
海外赴任は「選ばれた人」だけの世界に見えるかもしれません。でも、その「選ばれた人」の多くは、打診が来る前から静かに準備をしていた人たちです。
チャンスの女神には前髪しかない、と言われます。605〜805点というレンジは、その前髪をつかむための、具体的で現実的な目標です。「いつか海外で」を「いつでも行けます」に変える準備を、今日から始めてみませんか。
参考文献
- •IIBC「企業・団体の主なTOEIC Program活用目的」(英語活用実態調査2022ほか) https://group.iibc-global.org/organizations/corporate/study
- •Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
- •Jeon, E.-Y., & Day, R. R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265. https://eric.ed.gov/?id=EJ1117026