順番どおりに解くから伸びない?——「まぜて練習する」インターリービングの科学
問題集を最初のページから順番に解く。単語帳をユニット順に覚える。文法を単元ごとに完璧にしてから次へ進む——。この「きれいな順番」、実は学習効率の面では最適ではないかもしれません。
「シャッフルした問題」のほうが本番に強かった
Rohrer と Taylor は、数学の練習問題を使った実験で興味深い結果を報告しています。同じ問題を「単元ごとにまとめて」練習したグループと、「複数の単元をシャッフルして」練習したグループを比べたところ、練習直後の成績はまとめて派が上でした。ところが、後日のテストではシャッフル派が大きく上回ったのです(Rohrer & Taylor, 2007)。
この「まぜて練習する」手法はインターリービング(interleaving)と呼ばれます。効く理由として有力なのは、まぜられた状態では「この問題はどの解き方を使うのか」を毎回自分で判断しなければならない、という点です。単元ごとの練習では、その判断が要りません。ページの見出しが答えを教えてくれるからです。しかし本番の試験に、見出しはありません。
なお、この研究は数学を対象としたものです。語学への応用については研究が続いている段階ですが、「種類の判断込みで練習する」という原理は、英語学習の設計にも十分に示唆的です。
英語学習を「まぜる」とどうなるか
TOEICを例に考えてみましょう。Part 5の文法問題は、本番では品詞問題・動詞の形・前置詞・語彙問題がランダムに出ます。ところが対策では「品詞問題を30問連続で」解きがちです。連続で解けば、当然「品詞の目」で見るので正解しやすい。でもその正解は、「問題のタイプを見抜く練習」を飛ばした正解です。
まぜる練習は、たとえばこう作れます。
- •文法問題集は「単元横断のランダム演習」を定期的に挟む
- •単語学習は、品詞やテーマの違う語を意図的に混ぜて復習する
- •リスニングとリーディングを1日の中で交互に配置する
共通するのは、「いま何のモードか」を教材に教えてもらわず、自分で切り替える負荷をかけることです。
「できてる感」が減るのは、うまくいっている印
インターリービングには副作用があります。練習中の正答率が下がり、「できてる感」が薄れることです。前述の実験でも、練習中の成績はシャッフル派のほうが低くなっていました。
でも思い出してください。最終テストで勝ったのはシャッフル派です。練習中の快適さと、本番での強さは、しばしば逆相関します。 まぜて練習して詰まるのは、後回しにしていた「判断の練習」をいま払っているだけ。むしろ順調のサインと捉えましょう。
きれいなノートより、強い記憶を
単元順の学習は、管理しやすく、進んでいる実感もあって心地よいものです。その心地よさを少しだけ手放して、練習に「まぜる」を取り入れる——それだけで、同じ演習量が本番でより強く働いてくれる可能性があります。
今週の問題演習、1回だけ「シャッフルの日」を作ってみませんか。
参考文献
- •Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. http://uweb.cas.usf.edu/~drohrer/pdfs/Rohrer&Taylor2007IS.pdf
- •Dunlosky, J., et al. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266