730点は何ができる点数なのか——「Bレベル」の解像度を上げる
TOEIC730点。目標としてよく掲げられる数字ですが、「730点の人は実際、英語で何ができるのか」を説明できますか。
数字の意味がわからないまま目指す目標は、続きません。今回は、公式の評価基準から730点の正体を解像度高く見ていきます。
公式の「ものさし」で見る730点
IIBCが公開しているProficiency Scale(TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表)では、スコアがA〜Eの5つのレベルに区分されています。730点はそのうち「Bレベル」(730〜855点)の入り口にあたり、「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」レベルの目安とされています。
「素地」という言葉がポイントです。ネイティブのように話せるわけではないが、通常の会話は完全に理解でき、業務上のコミュニケーションも大きな支障なくこなせる——730点は、そんな「実務で使える英語」の入り口として位置づけられています。
社会の中での730点の「価値」
730点という数字は、いくつかの制度や基準の中で、はっきりとした意味を持っています。
- •国家公務員採用総合職試験では、TOEIC L&R 730点以上で総得点に25点が加算されます(600点以上は15点)。730点は制度上、「一段上の英語力」の線引きとして使われているのです。
- •企業の昇格要件でも、IIBCの活用事例では730点を昇格基準に組み込む企業の例が紹介されています。
- •企業が海外部門の社員に期待するスコアのレンジは605〜805点と紹介されており、730点はそのほぼ中央に位置します。つまり「海外と関わる仕事を任せられるかもしれない」と判断され始める帯域です。
こうして見ると、730点は単なるキリのいい数字ではなく、社会の複数の場面で「使える英語の証明」として通用するラインだとわかります。
730点までの道のりを分解する
では、730点に届くにはどんな力が必要なのでしょうか。ざっくり言えば、「リスニングとリーディングの両方で、安定して7割前後を取る力」です。そのためには、次の二つの土台が効いてきます。
語彙の量: 幅広い英文の読解には8,000〜9,000語族規模、聴解には6,000〜7,000語族規模の語彙が必要になり得ると推定されています(Nation, 2006)。730点レベルではそこまでの語彙は必須ではありませんが、方向性は同じです。単語は一夜漬けでなく、日々の接触で積み上げるものです。
処理の速さ: TOEICのリーディングは75分で100問。読み返しをしている余裕はありません。快適なレベルの英文を大量に読むことで読解速度が向上することが報告されており(Beglar, Hunt & Kite, 2012)、多読はスコア直結のトレーニングになります。
数字の向こうに「場面」を描く
730点を目指すとき、「あと何点」と考えるより、「どんな状況でも対応できる素地のある自分」を思い描くほうが、学習は続きやすくなります。海外からの電話に構えず出る自分、英文の依頼メールを普通に読み始める自分——730点は、その入り口に立ったことを世界に示す数字です。
次の受験日に、その入り口へ一歩近づいてみませんか。
参考文献
- •IIBC「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルとの相関表(Proficiency Scale)」 https://www.iibc-global.org/hubfs/library/default/toeic/official_data/lr/pdf/proficiency.pdf
- •人事院「国家公務員採用総合職試験における英語試験の活用」 https://www.jinji.go.jp/content/900035751.pdf
- •IIBC「企業・団体の主なTOEIC Program活用目的」 https://group.iibc-global.org/organizations/corporate/study
- •Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
- •Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners' reading rates. Language Learning, 62(3), 665–703. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x