週1レッスンだけでは伸びない、たぶん——「授業の外」のインプット量という変数
英会話スクールに1年通ったのに、思ったほど伸びなかった——よく聞く話です。講師が悪かったのでしょうか。教材が合わなかったのでしょうか。
もっと単純な原因かもしれません。接触時間の絶対量です。
週1時間は、年間でたった52時間
週1回60分のレッスンは、1年皆勤しても約52時間です。言語習得に必要な時間の見積もりは方法によってさまざまですが、数百〜数千時間の単位で語られるのが普通です。52時間は、その分母に対してあまりに小さい。
レッスンが無意味だと言いたいのではありません。レッスンは、発話の機会、フィードバック、ペースメーカーとして貴重です。ただ、言語の材料(語彙・表現・音)を体に蓄積する仕事は、週1時間では物理的に終わらない。この蓄積を担うのが、授業の外のインプット——自分で読む・聞く時間です。
第二言語習得研究では、理解可能なインプットの大量摂取が習得の中心的な役割を果たすという立場が古くからあり(Krashen, 1982)、実証面でも、授業外の多読を取り入れた学習の効果は、34研究を統合したメタ分析で報告されています(Nakanishi, 2015)。
レッスンを「使いこなす」人の時間配分
伸びる学習者の時間配分を図式化すると、こうなります。
- •平日(授業の外): 多読・多聴でインプットを蓄積する。1日30分なら週3.5時間——レッスンの3倍以上の接触時間がここで生まれます。
- •レッスン当日: 蓄積した材料を「使ってみる場」として使う。今週読んだ話・聞いた表現を、会話の中で試す。
- •レッスン後: 直された表現・言えなかった表現をメモし、翌週までのインプットの的にする。
この配分では、レッスンは「学ぶ場」から「試して修正する場」に変わります。話す練習の効果を最大化するのは、話す材料の在庫です。在庫の仕入れは、授業の外でしかできません。
「授業の外」を仕組み化する
自習が続かないからスクールに通っているのに——という声が聞こえてきそうです。だからこそ、根性ではなく仕組みで解決します。
1. レッスンと多読を「セット契約」にする: 「レッスンの予習として、やさしい英文を30分読む」を受講のルールに組み込む。レッスン代を無駄にしたくない心理が、自習の推進力に変わります。
2. 講師に「今週読んだもの」を報告する: 毎週の冒頭2分、読んだ本や聞いた素材について話す。締切効果と会話練習を兼ねられます。
3. 素材はレベルを下げて量を取る: 快適に読める・聞ける素材が、接触時間を最大化します。辞書なしで楽しめるレベルが目安です(Day & Bamford, 2002)。
主役は、あなたの平日
レッスンは、週に一度の試合です。試合だけ出て練習しない選手が伸びないのは、スポーツなら誰でも知っています。英語も同じでした、というだけの話です。
来週のレッスンまでの7日間。そこにインプットの30分を並べられたら、同じレッスンが何倍も効き始めます。
参考文献
- •Krashen, S. (1982). Principles and Practice in Second Language Acquisition. https://sdkrashen.com/content/books/principles_and_practice.pdf
- •Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. https://doi.org/10.1002/tesq.157
- •Day, R. R., & Bamford, J. (2002). Top ten principles for teaching extensive reading. Reading in a Foreign Language, 14(2), 136–141. https://nflrc.hawaii.edu/rfl/item/61